東会お知らせ No.253(2023年4月) 別紙資料

公営住宅住みにおいでよ! 大学生

自治体が管理する低所得者向けの公営住宅に、近隣大学の学生を受け入れる取り組みが全国に広がっている。住民の高齢化や空室の増加で公営住宅の自治会活動の停が課題となる中、入居した学生に参加してもらう。地域のコミュニティー活性化が期待され、住民にも歓迎されている。学生には安い家賃で住める利点がある。

家賃安く 通学時間を短縮

「大学二年生です。よろしくお願いします」。二月上旬、東京都墨田区の都営住宅の自治会役員会で、入居している大学生の男女五人があいさつした。東京都は昨年、近隣の大学と協定を締結し、学生十人が入居した。入居の条件は自治会に加入し、活動すること。清掃や草むしりなどに当番で参加するほか、月一回、資源ごみの回収にも当たる。
大学一年の瓜生雄羽さん(20)は実家から一時間半かけて通学していたが、大学から徒歩圏内、2DKで約二万円の家賃にひかれて入居した。「住民の皆さんに気にかけてもらっている。学生にとって自治会活動があるとはいえ、安い家賃で住めるのは魅力」と話す。
自治会長の永藤福信さん(64)は「今年は、新型コロナ禍で中断していた自治会の行事も復活するので参加してほしい。スマホ教室を開いてもらえたら」と笑顔を見せる。
国土交通省によると、公営住宅に住む65歳以上世帯の割合は2020年度末で約59%。前の入居者が退去してから一年以上経過した空き家戸数は全国で約46,000戸(2020年度末時点)に上り、2015年度末に比べて二倍以上に増えている。住民が基本的に共用部分を管理するため、自治会活動の担い手不足が懸念される。

高齢化・空室悩み 自治会に活気

公営住宅は本来、低所得者向けだが、自治体が国の承認を得て空きがある場合は、それ以外の人も入居できる。こうした事情を背景に学生が入居できるよう大学と自治体の協定締結が全国で拡大してきた。18年から始めた札幌市では学生が住宅の除雪をすることも。市の担当者は「住民に好意的に受け止められている」と話す。神奈川県や三重県でも取り組んでいる。
各地の公営住宅に詳しい兵庫県立大の久保園洋一客員研究員によると、少なくとも十年ほど前から学生入居の取り組みが広がってきた。「学生にとっても公営住宅の住民にとっても運営する自治体にとってもメリットがある取り組みだ。学生は数年で卒業するので、住民と学生の信頼関係を継続していくことが大切だ」と指摘する。